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第2回 柴田 博之(元プロ野球選手)

盗塁に必要なのは、勇気。思い切って最初の一歩を踏み出そう

盗塁で一番必要なのは、勇気

――柴田さんは現役時代、73個の盗塁を記録されています。盗塁をするときの心構えを教えてください。

盗塁に一番必要なのは、「勇気」なんです。一歩目を踏み出すための、勇気ですね。
その勇気がスタートを決めます。自信を持って「よし」と思って走ればセーフになるし、
「どうかな」と思いながら走れば、アウトになる。だから心で変わると思うんですよ、盗塁は。
試合の流れを考えすぎたり「アウトになってはいけない」という気持ちが強すぎたりすると、なかなか1歩目が出にくいものです。
例えばこの盗塁で試合が決まる、もっと言うとシーズンが決まる、日本一が決まるといった局面では、すごいプレッシャーがかかります。
そこでセーフになるか、アウトになるかでは大きく違いますからね。でも、そこでどう開き直れるか、なんです。
プラス思考というか、「アウトになってもいいや」というぐらいの気持ちでいないと、なかなかスタートが切れません。

――「アウトになってもいい」と思うのは、なかなか難しいのではないですか?

もちろんアウトになったらダメなんですよ。ダメなんだけど、まあ命までは取られない(笑)。
「決めたい、決めたい」と思いすぎると、失敗を恐れるあまりにスタート自体が切れなくて、後悔してしまいます。スタートを切ってアウトになれば、それは相手バッテリーが素晴らしかったということですから。

――スタートしてアウトになるより、スタートしなかった方が後悔が大きいのですね。

そうですね。その方が後に引きずります。
僕もプロに入って最初の頃は「アピールしなきゃ」「盗塁しなきゃ」と思っていたので、逆に全然行けなかった(スタートが切れなかった)。
途中から、それだったら「行ってアウトになろう」と思えるようになりました。その方が行ったことに対して「よし」と思えます。それが「勇気」です。
そういう気持ちの時には、スムーズにスタートが切れて、セーフになるものです。
足には自信があったので、普通にスタートを切れさえすれば、セーフになると思っていました。
でもプロの世界では、「普通にスタートを切る」こと自体が難しいものなんです。

――代走で出たときには、さらに難しくなりますね。

相手も走ってくるとわかっていますし、観客のみなさんも「走れ、走れ」と期待します。
その中で走るプレッシャーは、相当なものです。最初に代走で出た時は、足が震えましたよ(笑)。
でも、盗塁を決めたときの喜びは、倍になります。それでホームに還って来ると、さらにうれしい。その喜びを知ると、「もう一度味わいたい」となりましたね。

――そういったプレッシャーを克服する方法はありますか?

緊張したり、「決めなきゃ」と思いすぎたりすると、体に力が入りすぎるんです。
リラックスするために、逆に思い切り体に力を入れるんです。最初にグーッと力を入れて、それからちょっと抜く。それくらいが僕にはちょうど良かったですね。

そして集中すること

――盗塁を成功させて、「柴田=足」というイメージが定着すると、相手バッテリーの警戒も強くなりますよね。

そこからは集中します。
そうですね、牽制が多くなったりしますね。でもその分、それをかいくぐって盗塁を決める喜びもありました。
「そんなに警戒しても、同じだよ」みたいな(笑)

――相手もいろいろ研究する分、柴田さんも研究されたのではないですか?

もちろんです。タイムを計ったり、VTRを見て研究したり、スタートのしかたを考えたりしましたね。
それと、反応を速くする練習をしていました。日によって目の見え方が違うので、それによって反応の速さが変わってくるんですね。
だからコーチに手伝ってもらって、ボールが落ちたらスタートするといった練習を試合前に必ずやっていましたね。

――「タイムを計る」というのは?

僕の塁間のタイム(リードした位置から2塁ベースまで)は、2秒98から3秒08なんです。それに対する相手バッテリーのタイムを計るわけです。
まずはピッチャーが足を上げてから、ボールがキャッチャーミットに入るまでのタイムです。これはだいたい1秒20くらいです。
クイックモーションが速いピッチャーだと1秒10くらいですね。
それからキャッチャーがミットにボールを入れてから、ボールが2塁ベースに届くまでのタイムを計ります。これはだいたい1秒90から2秒です。
このタイムを計り、ピッチャーとキャッチャーの組み合わせで自分のタイムと0コンマ何秒の世界で比べて、「普通に走ればセーフだな」とか「ちょっと厳しいな」といった判断をするわけです。

――VTRではどんなことを研究したのですか?

ピッチャーのクセや配球です。変化球を投げる時に走った方がセーフになる確率が高いですから、例えばそのピッチャーはどんな変化球を持っていて、どのカウントで変化球が多いのかといったことを研究しましたね。

――スタートの形も変えていったのですか?

いろいろ試しましたよ。腕の振りはどうすれば速く走れるとか、足の位置はどこだとスタートを切りやすいとか。それぞれの形で実際に走ってタイムを計り、より速い形を追究しました。自分でいろいろ考えて試行錯誤した結果、今の形にたどりついたんです。

自分で考えることの大切さ

――やはり自分でいろいろ考えたから、それが身についたのでしょうね。

教えられてばかりだと、自分で何もできなくなります。
僕は今、野球を教える仕事をしていますが、一方的に教えるだけにならないようにしています。
練習前にどこを意識した練習をするのかを言ってもらい、「今日はここをこう考えてやります」というなら、そこを見てあげてアドバイスするんです。
やはり「ああしろ、こうしろ」では成長が少ないですよ。「自分はこうしたい」というのがあって、「そのためにはどうしたらよいか」でないとダメです。
このように、野球を通して自分で考えてやってみることを教えたいですね。
今は大人が型にはめたり、あれこれ縛り付けたりしていますが、「やったらダメ」というのではなく、やってみて覚えて欲しい。
もっと自由に考えさせてもいいのではないでしょうか? やってみてダメなら、ダメな理由をきちんと教えてあげればいいんです。

――おしつけられたものをやるだけだとダメなのですね。

そうです。だから型にはめるのではなく、「もっと上手くなりたい」とか「レギュラーになりたい」という向上心の手助けをしてあげたいですね。
それと、「なぜこうするのだろう?」とか「この練習は何のためにするんだろう?」といった疑問があれば、聞いて欲しい。
納得して練習するのと、ただやるのではまったく違ってきますから。やるのは本人なので、楽しくやって欲しいです。

――野球は楽しんでやるのが一番ですよね。

トムス野球塾の人数も増えてきましたが、なかには野球を嫌いになりそうな子もいるんですよ。
僕は「嫌いになって辞める」というのが一番イヤなんです。そういう子に野球の楽しさを教えたいですね。
最初はキャッチボールが楽しくて野球を始めたはず。それがいつか野球を「やらされる」ようになっているのは……。
「今日も野球か……」なんて思われたら悲しいですよ。好きだから努力するし、上手くなるんです。
最初にホームランやヒットを打ったときの感触や喜びを忘れないで、いきいき、のびのびとやって欲しいですね。

柴田 博之 hiroyuki shibata

元プロ野球選手

1976年7月8日生まれ/滋賀県出身/左投左打/外野手
栗東高~東北福祉大~西武ライオンズ(1999-2007) 現・トムス野球塾指導者
1998年のドラフト4位で西武ライオンズに入団。100m10秒8の俊足と抜群の打撃センスで2001年にレギュラーに定着。
113試合に出場し20盗塁、8三塁打を記録した。2007年で引退するまでの9年間で通算337試合に出場、打率.264、73盗塁。
父・利秋さんが元騎手であるなど競馬一家に育ったことと、その俊足から「シバタオー」のニックネームで親しまれた。

柴田博之

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